腰痛は10年ほど前からたまに起こり、デスクワークの途中でイスから立とうとすると背筋が伸びず、前かがみのまましばらく我慢していると、やっと上体が腰の上に乗るという症状だった。整形外科でレントゲンを撮っても骨には異状ないと言われ、接骨院や整体院のマッサージや加温療法に通い、それでも2、3日で治ったので、原因の分からぬままそれを繰り返してきた。
ところが今回は、整体院で回復に手間取り、鍼(はり)を打ってもらったら腰はよくなったが、入れ替えに尻から膝の裏側に痛みが移り、とうとう歩けなくなった。これは大変だと、以前とは別のA病院の整形外科で車イスに乗って診てもらった。レントゲンで異常が認められ、日を改めてMRIで詳細確認し、腰椎脊柱管狭窄症と診断された。そして紹介状とMRIの画像を用意するからよそで診てもらうようにと言われた。
紹介状というのは、ふつうは町医者の守備範囲を超える患者を、検査設備などの調った総合病院の専門医に紹介するものだが、今回はその逆で、それがなぜなのか特に説明はなかった。この医者は初診の時もこっちの質問には向き合わず、患者は余計なことは心配せず黙って医者に任せておけばよい、といった態度だったので、私も転院する方が好都合だと思った。こういう医者は少なくとも臨床医には向いていない。
さて、転院するにも整形外科に馴染みがなくどこにしたらよいか分からない。手術は嫌だが、薬を飲み続けた上、やはり手術ということもある。それなら町医者から再転院するより最初から病院にしておこうと、自宅近くのB病院を選んだ。
B病院に予約を申し込むと、紹介状をB病院宛てにしてくれと言われ、A病院に戻して翌日宛名入りを受け取り、あらためてB病院を予約し、やっと受診したら、町医者に紹介状を書き、画像と一緒に郵送すると言われた。
B病院の医者の説明は丁寧で、腰椎のどこどこの今の状態では手術の必要はなく、リハビリが適当だが、病院にはリハビリ室がないので、設備の整ったクリニックに行くとよい、というわけだった。同じ説明をA病院で受けていたら、3度も余計に病院に出かける必要はなかった。
医者と政治家と教師は、「先生」と呼ばれる3大職業で、人によって出来、不出来の差が大きい。頼りにされて耳を傾け、しっかり受け止める人と、俺は偉いんだと思い込み、上から目線で場が読めない人と。舌禍を繰り返して懲りない森喜朗元首相が典型例だ。
「先生」とは呼ばれないがよく似た話があって、企業経営者にはその地位に伴う使命に一所懸命な人がいる一方で、社内のことは権力の一極集中で逆らう人がなく、なんでも強引に押し通すという手合いがいる。こういう人ほど人の評価を気にして、見栄えの良いステータスをほしがる。
大事な命や生活や教育を預かる職業には、知性や品格を磨いた人格者が就くのが望ましいが、世の中はそんなにちゃんとはしていない。
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