ディベイト下手

YWCAの英会話教室に出るようになってそろそろ3年になる。英会話学校というと、どこでもたいていは海外旅行用、資格試験用、ビジネス会話用、時事英語用、なんとなく日常会話用、とひと通り揃えているが、YWCAにはシェークスピアや短編小説、映画、あるいは画家と絵画を教材にするクラスがある。

あっちこっちのクラスを試してみて、私はその後、TEDという講演の動画と映画を交互に取り上げるコースに落ち着いた。映画はプライムビデオやUNEXTの配信を見てから出席し、補完資料も使いながら意見を交わすのだが、韓国人の講師の指導力が優れていて、大学院レベルの授業を思わせる充実した時間になった。ついてゆく生徒の方も大変で、講師の望むところまで届かない時もあるが、授業を維持できるかどうかの要点は、英語力以上に映画の内容に対する鑑賞力、批評力、分析力、そして発言力にあると思われた。

というのもこのクラスはYWCAの中でも特別で、他のたとえば短編小説のクラスでは語句の解釈、読解力の確認までだったし、絵画や音楽の愛好者が集まるクラスでは、どこの展覧会に行って来た、どのコンサートが楽しかったと感想を述べあう日常会話の範囲内だった。

日本人は討論やディベイトが苦手で、集団の中で自分の意見を主張するのは、それが仲間内であっても口数が多いのは差し出がましい、慎みが足りないぐらいに思われがちなようだ。戦後教育では、クラスで話し合うホームルームの時間が導入されたが、どのくらいの効果があったのか。多民族国家と違い、人口の98%が日本人だそうで、おまけに周りを海に囲まれ、陸地で国境を接する他国がひとつもない特殊な事情が働き、以心伝心、皆まで言うな、目を見りゃ分かる、の伝統文化が出来上がっている。群れの中で目立たぬようにしていないと、はみ出し者は袋叩きにあう。

残念ながらこのクラスは昨年夏、講師が遠隔地に転居してしまい、リモート授業で続けてくれないかと願ったが叶わなかった。その後若いアメリカ人が講師を引き継ぎ、生徒の顔ぶれも半分変わった。生徒が行儀よく講師の話に聞き入っていると、慣れない講師はひとりでしゃべり続ける羽目になり、時々私に「なにか聞いてくれ」と救いを求めるような視線を送ってくる。


おまじない

この にほんブログ村 ライフスタイルブログ 生き方へ ボタンを押して
日本人も意思表示を大切に





この記事へのコメント